生産性の上げ方を知らない人が多すぎるということか
chikirinさんや、脱社畜さんのブログで反響が大きくなっているようので、自分も日ごろ考えてるところを少し
「生産性の概念の欠如」がたぶんもっとも深刻
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20131015
「もしかして日本って、工場(製造部門)以外には、ほんとーに、そういう概念がないのかも」と思えてきた。
そう思う。
製造業の製造部門の生産性向上に貢献しようというコンセプトのベンダーの中ですら、必ずしも全員が生産性を意識していない。それでも、他のホワイトカラーに比べ生産性の意識は高いほうだと思う。普通のサラリーマン会社ですが、なぜ他と違うのかと言うと、お客様や、他部門、競合他社が生産性を上げるのに頑張っている姿を見たり、触れたりすることがあるから。
つまり、並みの組織であってもきっかけがあれば生産性をあげる意識はうまれる。
前向きに捉えて、諦めずに各組織・個人はチャレンジし続ければ良いと思う。
『生産性は上げたほうがよいか?』という質問は、誰にきいても「上げたほうがよいと思う」「重要だと思う」と回答する。『生産性?なにそれ美味しいの?』という人はむしろ少ないと思う。なぜ、意識があるのに生産性をあげないのか、きっかけがあればできるのになぜ実行できないのか、というところが本当に解決すべき問題だと思う。
生産性を上げたら評価がさがるから、残業代を稼げなくなるから、という一部の代弁者の回答は心に残る言葉だが、本当のところは、生産性の上げ方をしらない、だと思う。と、同時に何が障害になっているか知らないことだと思う。
「朝の通勤時間60分を10%カイゼンせよ!」
「もちろん毎日だ」
誰もができるか?どうやって?すでに最短時間で通勤してたら?
「ブログの更新頻度20%あげよ!」
「ただし、文字量とクオリティは変えずにな」
誰もができるか?どうやって?既に質の高い人は?
普段自分が何気なくこなしている動作を改善しようと思うと、一体何が変えられるのか、全く検討がつかないのが普通の人だと思う。
一部のメールマガジンやニュース配信で、ちょっと効率向上といった、情報やアイデアをたびたび目にすることができるし、Lifehackerの記事を眺めると色々なアイデアが転がっている。多数の人が、こういった良いアイデアに触れているはずなのにどうして実行に移せないだろうか。その一つの理由が、自分の業務・作業に当てはまるのか、アイデアが有効かどうかわからないからだと思う。
例えばメールの整理術、一日50通程度しかメールが来ない人にとっては有効だろうか。既に自分なりの整理術が確立されていて、特に困っていない、時間を取られていると感じていない人が、自分の動作よりも遅いかもしれない方法を、試す勇気と時間があるだろうか。
改善活動の最大の難敵は「今、困ってない」。次点は、「変えたら、何かいいことあるの?」だ。
どんないいことあるのか?変えないと何がやばいか?は、chikirinさんが書いてるような感じで。これはどんどん啓発していくべきだとつくづく思う。
余った時間はよりクリエィティブな仕事や、個人の時間に回せる。そうしてこそイノベーションが生まれ、そうしてこそワークライフバランスが可能になる。
「今、困ってない」という言葉が出る時には、自分の当たり前になっていて、改善対象として気づいていないもの、とっくに改善を無意識に諦めているものが思わぬ効果をあげるということがある。意識外になっている業務から見なおしてみると良いと思う。
また、製造業の現場改善では作業間の切り替わりで発生する「段取りの回数」や「段取り時間」が改善対象にとして着目される。これは各人の業務を見直すのに大きなヒントになると思う。
例えば、頭脳ワークの作業、システムアーキテクトの設計作業に、30分おきに割り込みをかけると設計の仕上がりが遅くなるのは昔からよく知られていること。現実の工場では、一度止めると温度を上げるまで待たなくてはいけない設備を如何に連続稼働させるか生産計画を決めたり、治具をセットするため時間、物の移動時間までを考慮して道具や設備を配置する。ホワイトカラーの仕事もこのように、如何にアイドル時間と回数を減らせるかという観点で見直すと良いと思う。
誰もがすぐ見直せるのは、メール、もしもしゲーのログイン、SNSタイムラインのチェックあたりだろう。もちろんメール即返信が本当に必要な業務ならそこは改善ポイントではないが、これらに類似して改善できるところは多いと思う。
生産性をあげるといっても色んなアプローチがある
1つは、自分の生産性を上げる方法と、周りの生産性を上げる方法。
- 人に自分のよいやり方を教える/悪いところを指摘する
- 人からよいやり方を教わる/悪いところを指摘してもらう
自分の周囲の状況にあわせて、より望ましいワークライフバランスを達成可能な道がどちらにあるか、見極めたら良いと思う。自分の生産性をあげたらかえって仕事が増えてワークワークバランスになってしまったということがないように...。
生産性をあげてはいけないものもあるということがある
上げる労力に見合うほど上がらないものには向かわないほうがましということ。上げ方を知っている人、よい指導者や指導方法を見つけるようにしたほうがよい。あのグーグルですらなんでもかんでもテスト自動化しているわけではないことからも、これは覚えておいたほうがよい。
なんか内容がだれてきたので、生産性の上げ方として知らなければいけないことをまとめると
自分を知る
- 1日や1周間といった中で、何の時間が多いか知る
- 何をされると(自分の中で)生産性が落ちるかを知る
冷静に自己を見つめるのは根気がいるが、これが大前提。
相手を知る
- 他人と自分の仕事をよく見て違いを把握する
なんとなくあの人バリバリやれてるなーという人をスネークしたり、それとなく会話しているとわかってくる。褒めると手の内を晒してくれる人もいるので、そこからたどってみたり。
コミュニケーションの難しさを知る
- 勇気をもって聞く/指摘することの難しさ
- 同行者、先行者がいると進めやすいということを知る
難しいですが、やらないよりましということで覚悟を持ってやる。覚悟がないならやらないほうがよい。ただし関係が悪くならないように言葉は選んで。人を巻き込む場合は率先垂範が原則ということも。
時間がかかることを知る
- 即効性のある改善策はないと知る
- 愚直に、地道に時間をかける
組織が縦割りになって個人に分解され、互いに関心が薄い組織であればあるほど、改善活動の障害が大きくなるし、個々人のタスクが多く時間に追われるようなやり方を容認している組織はどうあっても改善されないということを自覚したら良いと思う。
…
ま、ぶっちゃけて言うと。
自分や自分達が無駄なことをしているという事実に向き合える勇気が必要
冷静に事実受け入れて自己否定ができないといけない。
残業自慢で自己肯定、自慰行為してたら一生改善しませんよっと。
自戒も込めて
...
脱社畜さんところでは生産性向上にインセンティブがないという指摘もあってごもっともと感じたが、そういう組織はそもそもインセンティブを働かせること自体が困難になっているので生産性だけでは語れないかなと。これはこれで別の話題にしよう。
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